女 子 高 生 と サ ラ リー マ ン
彼女について、思うこと。
時々、思うことがある。
年が離れた彼女のことを。
今、付き合っていてとても幸せだ。彼女と出会い、彼女と過ごし、ささやかな幸せを噛みしめる日々。
彼女以外の女性に目が行くこともなく……というか興味も持てず、もし考えるとするならば、必ず彼女の顔を思い出す。彼女に会いたいとか、こんな服も似合うだろうとか、大人になった彼女を妄想してニヤニヤしたりだとか。
彼女と会えない時間さえも愛おしく感じ、充実した気持ちを抱く日々。
今までに味わったことのないような毎日があるというのは、すべて彼女のおかげだ。
だからこそ、それと同じくらい不安になる時がある。
思い出すのは、自身の学生時代。
可愛い女の子にはすぐ目が行ってしまっていたし、ちょっと優しくされただけでときめいたこともあった。
あれは恋だったのか、それとも恋をしている自分が好きだったのか……今では真相は闇の中だ。少なくとも、今みたいに必死ではなかったように思う。様々な思い込みと勘違いが入り混じって、大したアタックをするわけでもなく、自己満足の世界で生きていたような気がする。
自分と彼女は全然違う。違う生き物だ。
性別も性格も体格も年齢も、全然違う。
だけど、思う時がある。
こんなに違う自分たちが、こうして付き合っている奇跡は、いつまで続くのだろうと。
自分は手放す気など全くないのだけど、移ろいやすい学生の彼女は、どうだろうか。
今は女子高だから、他の男との関わりはないかもしれない。
今の彼女が、自分から離れていく様子はない。
でも、彼女が高校を卒業したその後は?
環境が変わったその先で、彼女はまた自分の元に会いに来てくれるだろうか。
「はあ」
ここまで考えて、オレは自宅の天井を仰ぎながら溜息をついた。
彼女である間藤のどかと付き合い始めてから、何十回目の不安と、溜息。
「もっと信じてあげればいいのになぁ」
ぽつりぽつりと呟いても、オレの言葉に答えてくれる者は誰もいない。
彼女と一緒に過ごしている時は、こんなことを考える暇もなく「あぁ、幸せだなぁ」と天にも昇る気持ちを抱けるのだが……一人になった瞬間、ダメになる。
たとえば、彼女が帰った後とか。残業で疲れた身体を引きずりながら帰宅している途中とか。シャワーを浴びたり、布団に入った時とか……考える隙が生まれると、ついついそんなことを考えてしまう。
考えて、気付くのだ。
自分の貪欲さと、醜さ。壊さないようにと必死で耐える理性。
「それなんだよなぁ……うん……」
小さく呟きながら、その辺の床にごろりと横たわる。
先日、オレがスーツを着たり、何故かメイド服を着る羽目になったり。いろいろあったが、オレはどうかしていたと思う。
メイド服なんてまさにどうかしていたランキングナンバーワンに輝く自信があるが、あんな可愛らしい服を彼女に着せていたらと思うと……絶対に自分を抑えられる気がしない。半裸になったオレにあんな可愛らしい反応を見せただけで、オレの心が揺れたのだ。いらぬことを口走ったかもしれない。
オレは彼女の年齢を知っている。まだ未成年であると分かっている。
真剣に愛すがゆえに、オレは成人するまで彼女に手を出さないと決めていた。それは安心させるために、宣言もしたと思う。
彼女自身、そういう行為までは望んでいないようにも見えるので、余計にオレのおぞましい欲望は封印しなければならない。
むしろ、その封印が未成年時に解かれた時は…………自分で自分の幸せを手放すことになるのかもしれない、なんて不安が広がっていく。
「しっかりしないとな」
ずっと彼女の傍にいたいと願うから。
その願いを、叶えるために。
そんなことを考える、日曜日の夕方。
明日からまた、社畜生活が始まろうとしていた……。
(そりゃ気分も沈むよなぁ)
Copyright (c) 2017 Ayane Haduki All rights reserved. (2017.03.03 UP)